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対米従属の正体

９条「解釈改憲」から密約まで

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著者	末浪　靖司著
ジャンル	社会 > 日米安保
出版年月日	2012/05/30
ISBN	9784874984826
判型・ページ数	4-6・286ページ
定価	本体2,200円＋税
在庫	在庫あり

この本の内容

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「戦力」保持を禁じる憲法９条をもつ日本に、米軍駐留は許されない。
だが、日本に軍事基地を確保したいアメリカは、９条の「新解釈」を日本政府に教え込む――。
米公文書館に通うこと七年、今に続く対米従属の源流をここに突きとめる！

米軍人・軍属が日本で犯罪を犯しても、日本の裁判所では裁かれない。
それはなぜか？

米軍機は、深夜も早朝も爆音をとどろかせ、また住宅地での低空飛行をやめない。
それはなぜか？

その原因を突きとめるため、著者は新聞社を定年退職後、七年にわたりメリーランド州の米公文書館に通いつづけ、膨大な公文書を渉猟、日米政府間で交わされた密約の数々を発見する。

本書は、その公文書にもとづき、日本政府の従属的な対米関係がどうして生じたかを明らかにする。

●担当編集者より

　「教室で爆音１０５デシベル　普天間第二小、米軍機の発着時」
　一年間の記者交換制度で毎日新聞から琉球新報に出向している大治朋子記者による記事の見出しです（琉球新報、４月２日付）。
　105デシベルとは、車の直前で聞くクラクションの音量に匹敵するそうです。
　こんな殺人的騒音の下で、基地周辺の人々は暮らしています。基地の爆音だけでなく、米軍戦闘機が民家の屋根をかすめて飛ぶ低空飛行も、住民や自治体による抗議をしりぞけて全国各地で続けられています。
　こんな人権を無視した無法なことが、この日本でなぜ何十年も続いていており、なぜ放置されているのか――その背後にあるものを突きとめるために、本書の著者は2006年から、断続的ですが７年間、米公文書館にかよい、日米政府間で交わされた外交文書（主体は電文）を調査してきました。
　その結果わかったのは、米軍による種々の不法行為があっても、日本政府は黙認して追及しないという密約が交わされていたという事実でした。

　その密約は、なんと60年前の対日平和条約の発効（52年）以前から始まっていました。日本が連合国による占領下を脱して、「いっさいの戦力は保持しない」と宣言した平和憲法のもとに「独立」を回復した後も、米軍の日本駐留を維持したかった米政府は、９条が保持を禁じているのは“自国の戦力”であり、“他国の戦力”はこれに該当しないという「学説」をひねり出し、この「解釈」を日本政府に押しつけ、立川飛行場の拡張をめぐる砂川裁判での最高裁判決において確定させたのです（59年）。
　本書にはこの「解釈」に至る過程での米国政府の文書が紹介されています。また、最高裁での審議中、田中耕太郎長官とマッカーサー米駐日大使が密談していたことは2008年に暴露されましたが、それに加え本書では、田中長官が最高裁判事15人による評議の様子まで報告していたことが明らかにされました。
　　爆音問題と並んで、日米地位協定上の大問題が、犯罪を犯した米兵に対する裁判権の「実質放棄」の問題です。このことを最初に明確にしたのがジラード事件でした。1957年、群馬県の演習場で、薬莢拾いの農婦を「ママサン、ダイジョウブ」とおびき寄せ、発砲殺害した事件です。明白な殺人事件だったのに、日本で裁判にはかけられたものの執行猶予、事実上の「無罪放免」となりました。
　本書にはこれに関するマッカーサー大使から国務省への電文を掲載しています。

　第二次大戦後の日本の外交・防衛問題は、すなわち対米問題でした。原発問題も、対米関係を抜きには語れません。その日米関係の実態を、本書は文句の付けようのない事実（文書）で伝えています。ぜひとも多くの国民の目にふれてほしいと願っています。

（山本）

はじめに

Ⅰ「米軍駐留」合憲化への工作
１　最高裁判決の陰に長官とアメリカ大使の密談
＊砂川事件と伊達判決
＊最高裁に託したアメリカの狙い
＊最高裁判決を最大限に称讃
＊いかにして田中長官との関係を築いたか
＊法学者の見解は
２　アメリカが生み出した「九条解釈」
＊Ｊ・ハワードによる米軍基地合憲化論
＊日本国民の「平和への意志」を知っていたアメリカの当局者たち
＊他国軍の駐留を否定していた憲法学説
３　もう一人の最高裁長官が演じた役割
＊ジョン・アリソンの提言
＊吉田首相の転向
＊横田喜三郎の一八〇度転向
＊米国務省に評価された横田東大法学部長
＊米軍駐留に次いで安保条約も「合憲」に

Ⅱ米軍の法規無視をなぜやめさせられないのか
１　アメリカでやっていることを日本で出来ないのは
＊全国に広がる爆音・低空飛行被害
＊砂川判決と同じ論法で訴えを門前払い
＊アメリカ国内ではどうしているか
２　七〇年代から強まる米軍の治外法権的特権
＊外務省は機密文書で米軍の行為を容認
＊一九六〇年当時の政府答弁
＊国内法遵守による戦車輸送阻止事件
＊大平正芳外相の二枚舌
＊戦車は輸送できたが
＊一九七〇年代から始まる米軍への協力要求
＊ベトナム戦争後の米アジア戦略の青写真
３　地位協定第五条の過去と現在
＊第五条の本文を読む
＊公文書にみる第五条制定の過程
＊ラスク・レポート
＊神戸港が米艦船に非核証明を要求している根拠
＊一九六〇年当時は政府も自由入港を否定していた
＊港湾管理が自治体に託された歴史的背景
＊運輸省港湾局長による「密約」の火だね

Ⅲアメリカは裁判権放棄の密約をやめない
１　女性をおびき寄せ射殺したジラード事件
＊ジラード事件とは
＊「公務中」ではもちこたえられない
＊日本は裁判権の97％を放棄と米大統領
＊殺人犯ジラードは執行猶予で帰国
２　電車に発砲し乗客を殺したロングプリ事件
＊基地司令官は「殺人罪」を認定したが
＊判決は「業務上過失致死」
＊「公務外」でありながら「業務上過失致死」という矛盾
３　裁判権放棄の密約は生きている
＊日本との「好ましい刑事裁判権の取り決め」
＊〝帝国アメリカ〟の論理

Ⅳ日本からの「米軍出撃」と「核持込み」の密約
１「事前協議」を空洞化する密約
＊平然と事実を打ち消した米大使館
＊安保改定の目玉――「相互協力」と「事前協議」
＊「事前協議」をめぐる日米の思惑
２「出撃」を「移動」と言い換える密約
＊「極東」の範囲は地理的範囲ではなかった
＊沖縄を安保条約の対象地域から外した理由
＊電報一一一五の黒塗り部分
＊「密約」の完成
＊「引き揚げwithdrawal」は「移動transfer」に言い換え
３　核持ち込み密約は証明済み
＊密約の存在を語る六〇年「討論記録」
＊アイゼンハワー政権の核政策
＊日本の反核感情を知っていた米統合参謀本部

Ⅴ吉田・アチソン交換公文の密約
１「極東」での「国連軍」支援を約束
＊黒塗りの多い関連文書
＊吉田・アチソン交換公文とは
＊朝鮮戦争で使われた日本の米軍基地
＊「国連軍」の看板を掲げた米軍
＊「support」の意味は
２　交換公文はいかに作られたか
＊日本の基地に対する米国の執着
＊日本の基地から出撃する範囲を「極東」へ
＊「朝鮮」を削除し「極東」に置き換える
＊安保改定に対する米有力議員の懸念
＊米英の関係をモデルにして
＊「交換公文」は生きている、と日本政府も確認
３　安保改定時の交換公文でまた新たな密約
＊藤山外相による新たな「密約」の提案
＊古証文「国連軍地位協定」を利用して
＊米国はあくまで「平和条約の付属文書」に固執
＊「安保闘争」で変えられた統合参謀本部の文書
＊有識者委員会の密約隠し

あとがき