アジア新風土記(115) ブラッククリスマス - 2025.12.15
小さな「戦犯」
音楽家たちの戦争責任
矢田稔は9歳でレコードデビュー。
「兵隊さん 御苦労さん 雨の降る日も風の夜も」と歌い、結果として、自分が歌ったことで人びとを戦争に駆り立ててしまったという強い自責の念に駆られ戦後を歩んできた。
歌が心理的に与える効果は大きい。心を揺さぶるからこそ、戦前、戦時期は、大衆を扇動して戦争を遂行する道具とされた不幸な過去を持っている。音楽が戦争とどのようにかかわっていたかは、アカデミズムの世界ではさまざまな考察が進んでいる。戦時下において、音楽や芸能がどのように「下からの熱狂」を支えていたのか。希少な男児童謡歌手として、また俳優として戦時中に芸能活動をしてきた矢田稔の半生を中心に、戦時下において表現者であるとはどういうことだったのかを考える。
2 戦時童謡歌手・矢田稔
お国のために
戦前の天皇観
青い鳥児童合唱団
師・佐々木すぐる
努力の人
歌えなかった「月の沙漠」
今も師を追慕
3 戦時期のデビュー
突然の「専属契約」
二足のわらじ
戦火拡大期の芸能界
ほかの子どもと「別世界」
日米開戦の記憶
消えなかった米英音楽
映画出演
予期せぬ「熱狂」
4 音楽界の戦争協力
表現が不自由だった時代
レコード検閲の開始
「御用団体」の登場
天皇制への奉仕
肉弾三勇士
音楽の経済貢献
慰問に注力
5 天才少女歌手・高橋祐子
忘れられた天才
「やさしい親鷲」
専属契約での「囲い込み
6 戦争にささげられた歌
音楽教育の変質
本土初空襲に遭遇
戦局転換の契機
空襲と歌
「出て来りゃ地獄へ逆落とし」
低調な歌への批判
7 歌手引退と終戦
突然訪れた変声期
杉村春子とのハーモニー
城北大空襲
着の身着のまま
都会っ子へのいじめ
講堂で聞いた「玉音」
初めて見たアメリカ人
8 新聞紙上の「楽壇戦犯論争」
解放感
「楽壇戦犯論争」
論争広がらず
過去を白紙化
新聞も「共犯関係」
「反省」なき再出発
ささやかな抵抗
9 音楽家たちの戦後
非国民とされる恐怖
忘れ得ぬ歌
戦後の改作
佐々木すぐるの悔悟
時代を乗り越える歌
10 戦後に芽生えた「戦犯」意識
「自由」を謳歌
芸能活動を再開
俳優座養成所
テレビ黎明期に身を置く
転機
戦時期を回顧
戦争体験談との出会い
エピローグ
主要参考文献・資料(五十音順)
あとがき
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