追悼と謝辞:新崎盛暉さんを偲んで - 2018.04.05
チェチェン民族学序説
その倫理、規範、文化、宗教=ウェズデンゲル
著者 | ムサー・アフマードフ 著 今西 昌幸 訳 林 克明 著 |
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ジャンル | 人文・歴史書 > 思想・哲学 |
出版年月日 | 2009/03/01 |
ISBN | 9784874984178 |
判型・ページ数 | 4-6・328ページ |
定価 | 本体2,500円+税 |
在庫 | 在庫あり |
ロシアとの対峙を続ける少数民族・チェチェン。その世界観、宗教観、先史時代から受け継がれる慣習がいま明らかに。厳しい慣習と神への尊敬が人を律する、チェチェンとその精神を理解するための一冊!
本書の原書「ウェズデンゲル」は、チェチェン人の行動規範を著したチェチェン語の高校教科書。著者自ら一般向けにグレードアップしたロシア語訳を、世界に先駆けて日本語に翻訳したものである。ロシアによる人類史上例を見ない虐殺に見舞われたチェチェン人とは、どのような伝統文化を持った民族なのかを知る手がかりに、さらには大国の思惑が交錯する、コーカサス地方全般の文化に関心を寄せる契機となるだろう。
プロローグ──社会の崩壊に苦しむチェチェン
伝統と信仰と道徳
七世代後まで受け継がれる責任
第Ⅰ章 チェチェン人とウェズデンゲル
ウェズデンゲルとアダト・ギルラフ
人は「文化」を創れるか?
よき慣習の基礎
ウェズデンゲルは実践することに意味がある
ウェズデンゲルという名の塔
第Ⅱ章 人間の自由と聖人君子の生き方
尊厳の重要さ
自由について
神に従う自由
正義と忍耐
勇敢さ、無分別、自尊心、妬み
慈悲、気前よさ
親友、移住者
義務、良心
聖人君子の生き方
聖人君子の条件
戦う聖職者たち
第Ⅲ章 チェチェン人のふるまい方─「血の復讐」とその問題
男のひげと髪、服装
女性がスカーフを脱ぐとき、紛争が終わる
挨拶のルール
挨拶の言葉
「前を確かめずに一歩も進むな、後を確かめずに一語もしゃべるな」
老人と弱者の尊重
「言葉」の意味
議論のやりかた──チェチェンの寄合い
もてなしのルール
客の来ない家に幸せは来ない──客人の扱い方
弔事のふるまい方
「貴人」と「奴隷」
「秘密の言いふらし」と「呪いの宣告」
「血の復讐」とイスラム
「血の赦し」──紛争の解決
忍耐の不足は失望を呼ぶ
和解について
第Ⅳ章 結婚、家族、子ども
チェチェン人の名前
子育て
母と子
チェチェンの遊びと謎かけ歌
雨乞い遊び
幼年時代の終わり──十五歳の儀式
戦士の試験
結婚前の交際
婚約──「心の対話」と約束の贈り物
夜会──もう一つの求愛の場
夜会の詩
見合いと花嫁の身元調査
駆け落ち
略奪結婚の問題
結婚式
「舌を解く」──嫁入りの儀式
分家と親孝行
新婦の実家への訪問
両親への尊敬
家族の諍い
第Ⅴ章 自然と人びとの労働、祖国への愛
人は自然といかにつきあうのか
チェチェン人と生き物の関係
馬/ロバと牛/猫/犬と鶏/狼/鹿/鳥類とりわけ燕
昆虫の扱い──勤勉なアリやミツバチの話
狩猟のルール
樹木や植物を守る
水源の保護
大地への尊敬
犂路の日
共同作業
祖国への愛
第Ⅵ章 チェチェンの民主主義とイスラムの受容
質素を尊ぶ人びと
全国会議と国家
雇われ貴族
異教からイスラム教へ
ウシェルマ──闇に戦いを挑んだ若者
シャミーリ──異質の指導者
ミチク川の決戦
クンタ・ハジ──慈雨の指導者
ロシア化したチェチェン人たち
第Ⅶ章 歴史に揺さぶられるチェチェン人─革命と戦争
革命初期(一九一七年~二〇年頃)
強まるソビエト政府の支配
両極端を選ぶチェチェン人
ソビエト的な慣行に染まる人びと
強制移住
堕落の道
チェチェンへの帰郷
二重の生活
ソ連崩壊と、自由の困難
第一次チェチェン戦争で示された精神力
停戦と第二次チェチェン戦争──新たな不幸のはじまり
いま、何をなすべきか
第Ⅷ章 イスラム教とチェチェン
イスラム教の世界
「絶対信仰」
チェチェンのイスラム教団
ナクシュバンディー派/カーディリー派
宗教と詩が育てたチェチェン語
聖職者たちの群像
黄金時代
民族語という「鍵」
エピローグ──チェチェン人を鼓舞するもの
訳者あとがき
【資料編】
●チェチェン共和国・イチケリア憲法/1992年
●ハサブユルト合意/1996年
●平和と相互関係に関する条約/1997年
●チェチェン共和国・ノフチーン憲法/2003年