追悼と謝辞:新崎盛暉さんを偲んで - 2018.04.05
戦争を悼む人びと
戦後の日本人・日本社会では「常識」「共通認識」として定着しなかった「加害」に正面から向き合った人びとから聞き取ったインタビュー集。
第Ⅰ部は、民間人の多大な犠牲者を強いた中国とフィリピンで戦った兵士、日本兵にとって地獄の戦地であったニューギニアに行った軍属、特攻隊員となった学徒兵や少年兵など6人の元兵士のインタビュー。
第Ⅱ部は、「加害」を語り続けた元兵士たちの活動を引き継いだ若者たち、「戦犯の父」の罪を背負った息子、元連合軍捕虜たちとの和解に尽力する人びと、「慰安婦」問題に取り組む人びと、憲兵だった父の足跡をたどった娘など、いわゆる「戦後世代」が「戦争責任」とどのように向き合ってきたかを長い月日をかけて丁寧に聞き取った労作!
2016年4月10日 朝日新聞読書面に書評が出ました!
第Ⅰ部 戦争を悼む人びと
1 消えない井戸の声 金子安次
*悪童だった頃
*新兵訓練
*「東洋鬼」として
*シベリアへ
*撫順戦犯管理所
*おれには責任はない
*帰国後の苦難
*罪の重さに目覚める
2「戦争の大義」に疑念を抱いた学徒兵 岩井忠正
*戦争に対する懐疑心
*父の快哉
*何のために死ぬのか
*人間魚雷「回天」訓練
*〝棺桶〟に乗る――「回天」訓練
*伏龍特攻隊
3 一度に四人の乗組員を殺す重爆特攻 花道柳太郎
*小学校を卒業して軍の学校へ
*所属部隊がそのまま特攻部隊に
*出撃直前の悲劇
*出撃
*戦後の沈黙
4「大東亜共栄圏」の夢を追って 飯田 進
*大学進学の夢が開戦でたたれる
*「大東亜共栄圏」建設の尖兵に
*戦況の悪化
*実戦に参加
*住民虐殺
*敗戦
*戦争犯罪人
*巣鴨プリズンへ
*出獄
5 民間人虐殺に加担した罪を背負って 熊井敏美
*マッカーサーの群を追撃
*バターン死の行進
*抗日ゲリラ掃討作戦
*ホープベール(希望の谷)の虐殺事件
*日本人集団自決
*熊井さんの「戦後」
6シベリアに抑留された少年兵 猪熊得郎
*十五歳で軍に志願
*満州の地で
*ソ連の参戦
*ラーゲリの日々
*帰還
第Ⅱ部 「加害」の記憶を受け継ぐ人びと
7 元兵士と戦後世代がともに歩む
*湯浅 健――中国帰還者連絡会
*土屋芳雄――中国帰還者連絡会
*三尾 豊――中国帰還者連絡会
*熊谷伸一郎――撫順の奇蹟を受け継ぐ会
*荒川美智代――撫順の奇蹟を受け継ぐ会
8 戦犯の子、罪の赦しを求めて
*子煩悩だった父
*虐殺
*「戦犯の子」
*父の罪を背負って
*母に重なる絵
9 連合軍捕虜と向き合った人びと
*笹本妙子――POW(戦争捕虜)研究会
*田村桂子――POW(戦争捕虜)研究会
*ホームズ恵子――POW(戦争捕虜)研究会
10 女たちの戦争と平和資料館
*元「慰安婦」立ちの尊厳を取り返す
*池田恵理子――「女たちの戦争と平和資料館(Wam)館長
11 憲兵だった父の遺したもの
*父の遺言
*父の遺志を叶える
*「戦争責任」をどう受け継ぐか
*中国の旅
*父が勤務した地
参考文献一覧
日本社会に「つまずきの石」を刻む――「あとがき」にかえて
(編集者より)
2015年8月14日、戦後70年を記念して、安倍談話が発表されました。
日露戦争を称え、300万同胞の「尊い犠牲」の上に築かれた平和国家・日本──戦後の日本人・日本社会の歴史認識の集大成とも言えるようなものでした。
「侵略」という文言はありましたが、その主語・主体となる言葉は捨象されています。
「植民地支配」の言葉はなくなりました。
まさにこれが戦後70年、日本人が到達した歴史認識です。
しかし、「加害」の記憶を喪失した日本人および日本社会により良い未来があるでしょうか?
本書は長年海外で暮らしながら、日本の右傾化を憂いた著者が、戦場体験者を訪ねて貴重な証言に耳を傾け、痛ましいまでに戦争の内省をしてきた戦後世代の思いを聞き取ってまとめた記録です。
あと数年もすれば、戦場体験者はほとんどいなくなります。
彼らの体験を教訓として、後の世代はどう生かしていくか──本書は戦場体験者の教訓を生かすためのヒントを示唆してくれる労作です。