2009年4月から、NHKでは「「プロジェクトJAPAN―私たちは世界の中でどう生きた。そして、これから、どう生きる」という、2011年まで、足かけ3年に及ぶ大プロジェクトを始めています。
2009年―横浜開港150周年
2010年―韓国併合から100年
2011年―太平洋戦争開戦70周年・サンフランシスコ講和条約60周年
この大プロジェクトの大きな売り物の一つが、「スペシャルドラマ・坂の上の雲」(全13回、09年5回、10・11年は各4回。第1回放送は2009年11月29日)です。
原作は司馬遼太郎、明治初年から日露戦争まで、日本が西欧列強の仲間入りを果たすまでの時期を描いています。
原作者の司馬は国民的作家と言われ、その死後も多くの著作物、関連図書が刊行され、日本人の歴史観に大きな影響を与えています(「坂の上の雲」は総発行部数2000万部を超えています)。
この司馬の代表作「坂の上の雲」で、彼は繰り返し、「明治の指導者・国民は良かった。戦前の昭和は本来の日本ではなかった」と主張します。司馬だけでなく、大佛次郎・大岡昇平といった知識人たちも、「明治の先人たちの築きあげたものを、昭和の三代目が台無しにした」という認識を残しています。このような「明治栄光論」は多くの日本人が共有しているといえます。
しかし、明治という時代は、本当に近代日本の「青年期」「素晴らしい時代」だったのでしょうか?
本書は、日清戦争・日朝関係史研究の第一人者である著者が、「明治日本」が朝鮮半島を踏み台≠ノして帝国主義国への階段を昇っていった過程を、具体的な事例(日本軍による朝鮮王宮占領事件、朝鮮農民軍の虐殺、朝鮮王妃殺害事件)をカギとして解き明かし、「明治日本」が純粋無垢な「少年の国」(司馬の言葉)ではなかったことを証明します。
サラリーマン・自営業者から大企業の経営者・政治家まで、幅広い読者を獲得してきた司馬作品は本当に近代日本の真の姿を捉えているかどうか、司馬史観を問い直すことは日本人の歴史認識を問い直すことになるのではないか、そんな思いを込めた一冊です。