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チェチェン民族学序説
チェチェン民族学序説
−その倫理、規範、文化、宗教=ウェズデンゲル
ムサー・アフマードフ=著 今西 昌幸=訳
特別寄稿 林 克明(ジャーナリスト)
編集協力 大富 亮(チェチェンニュース)
●四六判 上製 328頁
●2009年3月1日発行
●本体価格2500円
●ISBN978-4-87498-417-8 C0039

ロシアとの対峙を続ける少数民族・チェチェン。その世界観、宗教観、先史時代から受け継がれる慣習がいま明らかに。厳しい慣習と神への尊敬が人を律する、チェチェンとその精神を理解するための一冊!
本書の原書「ウェズデンゲル」は、チェチェン人の行動規範を著したチェチェン語の高校教科書。著者自ら一般向けにグレードアップしたロシア語訳を、世界に先駆けて日本語に翻訳したものである。ロシアによる人類史上例を見ない虐殺に見舞われたチェチェン人とは、どのような伝統文化を持った民族なのかを知る手がかりに、さらには大国の思惑が交錯する、コーカサス地方全般の文化に関心を寄せる契機となるだろう。
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●もくじ

■本書に寄せて 荒波を乗り越えるための海図・ウェズデンゲル  林 克明
プロローグ──社会の崩壊に苦しむチェチェン
  • 伝統と信仰と道徳
  • 七世代後まで受け継がれる責任
第T章 チェチェン人とウェズデンゲル
  • ウェズデンゲルとアダト・ギルラフ
  • 人は「文化」を創れるか?
  • よき慣習の基礎
  • ウェズデンゲルは実践することに意味がある
  • ウェズデンゲルという名の塔
第U章 人間の自由と聖人君子の生き方
  • 尊厳の重要さ
  • 自由について
  • 神に従う自由
  • 正義と忍耐
  • 勇敢さ、無分別、自尊心、妬み
  • 慈悲、気前よさ
  • 親友、移住者
  • 義務、良心
  • 聖人君子の生き方
  • 聖人君子の条件
  • 戦う聖職者たち
第V章 チェチェン人のふるまい方─「血の復讐」とその問題
  • 男のひげと髪、服装
  • 女性がスカーフを脱ぐとき、紛争が終わる
  • 挨拶のルール
  • 挨拶の言葉
  • 「前を確かめずに一歩も進むな、後を確かめずに一語もしゃべるな」
  • 老人と弱者の尊重
  • 「言葉」の意味
  • 議論のやりかた──チェチェンの寄合い
  • もてなしのルール
  • 客の来ない家に幸せは来ない──客人の扱い方
  • 弔事のふるまい方
  • 「貴人」と「奴隷」
  • 「秘密の言いふらし」と「呪いの宣告」
  • 「血の復讐」とイスラム
  • 「血の赦し」──紛争の解決
  • 忍耐の不足は失望を呼ぶ
  • 和解について
第W章 結婚、家族、子ども
  • チェチェン人の名前
  • 子育て
  • 母と子
  • チェチェンの遊びと謎かけ歌
  • 雨乞い遊び
  • 幼年時代の終わり──十五歳の儀式
  • 戦士の試験
  • 結婚前の交際
  • 婚約──「心の対話」と約束の贈り物
  • 夜会──もう一つの求愛の場
  • 夜会の詩
  • 見合いと花嫁の身元調査
  • 駆け落ち
  • 略奪結婚の問題
  • 結婚式
  • 「舌を解く」──嫁入りの儀式
  • 分家と親孝行
  • 新婦の実家への訪問
  • 両親への尊敬
  • 家族の諍い
第X章 自然と人びとの労働、祖国への愛
  • 人は自然といかにつきあうのか
  • チェチェン人と生き物の関係
     馬/ロバと牛/猫/犬と鶏/狼/鹿/鳥類とりわけ燕
  • 昆虫の扱い──勤勉なアリやミツバチの話
  • 狩猟のルール
  • 樹木や植物を守る
  • 水源の保護
  • 大地への尊敬
  • 犂路の日
  • 共同作業
  • 祖国への愛
第Y章 チェチェンの民主主義とイスラムの受容
  • 質素を尊ぶ人びと
  • 全国会議と国家
  • 雇われ貴族
  • 異教からイスラム教へ
  • ウシェルマ──闇に戦いを挑んだ若者
  • シャミーリ──異質の指導者
  • ミチク川の決戦
  • クンタ・ハジ──慈雨の指導者
  • ロシア化したチェチェン人たち
第Z章 歴史に揺さぶられるチェチェン人─革命と戦争
  • 革命初期(一九一七年〜二〇年頃)
  • 強まるソビエト政府の支配
  • 両極端を選ぶチェチェン人
  • ソビエト的な慣行に染まる人びと
  • 強制移住
  • 堕落の道
  • チェチェンへの帰郷
  • 二重の生活
  • ソ連崩壊と、自由の困難
  • 第一次チェチェン戦争で示された精神力
  • 停戦と第二次チェチェン戦争──新たな不幸のはじまり
  • いま、何をなすべきか
第[章 イスラム教とチェチェン
  • イスラム教の世界
  • 「絶対信仰」
  • チェチェンのイスラム教団
     ナクシュバンディー派/カーディリー派
  • 宗教と詩が育てたチェチェン語
  • 聖職者たちの群像
  • 黄金時代
  • 民族語という「鍵」
 エピローグ──チェチェン人を鼓舞するもの
 訳者あとがき
【資料編】
●チェチェン共和国・イチケリア憲法/1992年
●ハサブユルト合意/1996年
●平和と相互関係に関する条約/1997年
●チェチェン共和国・ノフチーン憲法/2003年



 
●担当編集者より

 2005年6月に結成された「チェチェン連絡会議」は、チェチェン戦争の平和的解決のために活動しているNGOと個人が集まり、日本でこの問題への関心を喚起するために結成されたものです。

 『チェチェン民族学序説―その論理、規範、文化、宗教=ウェズデンゲル 』の刊行を記念して、チェチェン連絡会議は2月28日に、出版記念報告会を開きました。
 翻訳出版に関わった方がたや多くの支援者などが集い、出版・翻訳にまつわるエピソードや、最近のモスクワでの諸事件、チェチェンの平和や、ロシアの民主化について考える場となりました。

 この場で訳者の今西さんが、著者のムサー・アフマードフさんから会に寄せられたメッセージを紹介してくださいました。
 ここにも紹介したいと思います。

 「あらゆる面で高い水準にある文化を持っている日本で、私の『ウェズデンゲル』が翻訳出版されたことを、たいへんにうれしく思います。日本の皆様が、チェチェンという小さな国の文化と伝統に関心を寄せてくださっていることも、喜ばしい限りです。
 私たちは、これまで芥川龍之介、大江健三郎、安部公房といった作家の作品を通じて、日本の倫理感に触れていますが、地理的に大きくへだたった両国の倫理感には、思いのほか多くの共通点があることを知っております。

 現在のチェチェンの社会状況は、表面的には比較的落ち着いてきているといえます。最近では、「チェチェンの心」と呼ばれるイスラム教総本山寺院が建立されました。チェチェン人の宗教活動も徐々に復活してきています。       ムサー・アフマードフ」

 さてこの本は、『チェチェンで何が起こっているのか』の共著者の林克明さん、大富亮さんにご尽力いただいて刊行できたものです。
 実は訳者の今西さんは、小社の著者関係者としては、このおふたり以外にもつながりがあったのです。
 『小学生への読みがたり、読みきかせ 中高学年編』の編者のおひとり、石崎恵子先生のお兄さまであり、そして「この本だいすきの会」代表の小松崎進先生が、学生時代に教育実習先で教えたことがあった方だったというのです。

 チェチェン問題と子どもの本と読書の研究会、普通ではあまりクロスすることはないでしょうが、人と人のつながりは見事にクロスして、本当にびっくりしました。
 そして高文研としてはちょっと風変わりなタイトルの本が、ここに誕生しました。
 
 ご一読いただけましたら、うれしく思います。


(山本邦彦)


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