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朝鮮王妃殺害と日本人
朝鮮王妃殺害と日本人
誰が仕組んで、誰が実行したのか
金 文子=著
●46判・上製・386頁
●2009年2月17日発行
●本体価格2800円
●ISBN978-4-87498-416-1 C0021

日清戦争が終わって半年、1895年(明治28)10月8日早朝、朝鮮全権公使・三浦梧楼の指揮の下、日本軍人、壮士らが抜刀して朝鮮王宮に乱入、王妃を捜し出し、斬殺した。どうしてこんな凶悪無比なことをしたのか?日本政府、軍はこれにどう関わっていたのか?これまで殺された王妃とされてきた有名な写真のウソを暴くのを手始めに、事件の真相を明らかにする!
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●もくじ

序章 王妃の写真
  • 朝鮮王妃殺害事件
  • 「閔妃の写真」
  • 「王妃」か「宮女」か
  • ロゼッティー著『韓国と韓国人』
  • 写真師・村上天真
  • 『戦国写真画報』
  • 誰が最初に間違えたか
  • 駐韓英国総領事の報告書
  • 「須永ノート」に描かれた王妃の最期
T 日清戦争大勝利のあとに──揺れ動く日本の対朝鮮政策
 1 三国干渉後の陸奥外相と川上中将
  • 「新対韓方針」の閣議決定
  • 朝鮮駐屯軍の交替問題
  • なお続いた「三国干渉」
  • 川上操六の帰京
 2 朝鮮公使井上馨の意見書
  • 朝鮮公使になった「元勲」井上馨
  • 公債ノ事──賠償金の一部を朝鮮政府に寄贈
  • 電信ノ事──朝鮮への電信線返還論
  • 京城守備兵ノ事──日本軍の駐兵をめぐる思惑
  • 芳川法相の山県・陸奥あて書簡
 3 朝鮮政府の「駐兵依頼書」とロシアの介入
  • 「駐兵依頼書」の怪
  • 「駐兵依頼書」の真相
  • ロシアの介入
  • 杉村濬のこと
U 王妃殺害を準備したのは誰か──特命全権公使・三浦梧楼の登場
 1 井上馨の更迭と三浦梧楼の登場
  • 陸軍中将三浦梧楼、「特命全権公使」に任命される
  • 井上馨の野村内相あて電信
  • 三浦梧楼の回顧談
  • 谷干城の伊藤総理あて書簡
  • 川上操六と三浦梧楼
 2 井上公使の帰任と懐柔策の始まり
  • 朝鮮王室のロシア接近と井上の懐柔策
  • 王妃の寄付金受取り拒否
 3 梯子をはずされる井上の懐柔策
  • 寄付金をめぐる二人の公使と外相の電信
  • 井上を突き放した西園寺の電信
  • 国王への寄付金撤回通告
  • 井上の電信線処分案
 4 三浦梧楼の朝鮮駐屯軍指揮権獲得
  • 駐兵をめぐる三浦公使と川上中将の電信
  • 三浦の軍隊指揮権の要求
  • 川上操六の大本営訓令案
  • 西園寺外相の激怒
  • 伊藤総理の追認
  • 南部兵站監へ訓令
V 「王妃事件」第一報の打電者──新納時亮海軍少佐にみる日本海軍の諜報活動
 1 王妃事件の第一報
  • 「国王無事、王妃殺害セラレシ」
  • 意外だった海軍からの第一報
 2 新納時亮小伝
  • 戊辰戦争では鹿児島から函館まで列島縦断
  • 軍艦「春日」に乗る
  • 軍事密偵となる
 3 日清戦争期の新納時亮
  • 朝鮮公使館付となる
  • 黄海海戦に出る
  • 大本営付となる
  • 威海衛攻略作戦の中で
 4 王妃事件前夜と「その日」
  • 情報将校としての観察
  • 内田京城領事の証言
  • 王妃殺害を報告に来た者たち
 5 川上操六が主導した政府・軍の特使派遣
  • 事件直後の日本政府首脳たちの動き
  • 陸奥も謀略を黙認していた
  • 伊集院海軍大佐の報告
 6 新納時亮のその後
  • 金鵄勲章を受ける
  • 見直されるべき海軍の諜報活動
W 陸軍は事件にどう関わったか──楠瀬幸彦陸軍砲兵中佐の足跡を追って
 1 全員無罪となった事件関与の軍人たち
  • 軍法会議の判決廷
  • 王妃殺害実行者の軍人たち
 2 軍事エリート楠瀬幸彦の誕生
  • 陸軍士官学校首席卒業
  • 四年間のフランス留学
  • 川上操六に随行してドイツへ留学
 3 日清戦争期の楠瀬幸彦
  • 朝鮮国の軍務顧問に就任
  • 楠瀬の訓錬隊設置計画案
  • 「十八大隊陣中日誌」にみえる楠瀬の活躍
 4 王妃事件前夜
  • 国王高宗の「訓錬隊」排斥
  • 三浦梧楼の着任と「訓錬隊」教官の補強
  • 楠瀬から川上操六への電信
 5 軍法会議判決書
  • 「その日」の帰国芝居
  • 全員無罪の論理
 6 楠瀬の部下、補佐官の証言
  • 楠瀬中佐は部下一一名を率いて光化門前にいた
  • 部下の口を封じた訓辞
 7 朝鮮からの召還船の中で
  • 楠瀬、三浦梧楼と共に帰国
  • 三浦は無罪判決を確信していた
X 告発と隠蔽のはざまで──京城領事・内田定槌が残した事件の真実
 1 内田領事と王妃事件
  • 「歴史上古今未曾有の凶悪」事件と称した外交官
  • 夜明けの砲声
 2 外務次官・原敬あての私信
  • 残されていた私信一二通
  • 王妃を殺害したのは「陸軍少尉」
  • 内田領事の隠蔽工作
 3 内田領事の公信報告書
  • 外務大臣・西園寺公望あて報告
  • 西園寺の叱責と内田の反論
  • 王妃殺害現場の図と天皇への報告
  • 機密第五十三号と広島裁判
 4 高宗のロシア公使館逃避後の再調査
  • 朝鮮政府による調査報告の発表をめぐる攻防
  • 朝鮮政府報告書に描写された惨劇
 5 明治天皇と三浦梧楼
  • 天皇の使い
  • 三浦が自ら認めた「つくり話」
Y 王妃殺害に加わった「壮士」たち──熊本国権党と王妃事件
 1 熊本国権党の二代目領袖・安達謙蔵
  • 『自序伝』と「談話速記」から
  • 「閔后」を「閔妃」に訂正
  • 佐々友房設立の済々黌に学んで
  • 参謀本部の諜報活動に協力した留学生たち
 2 朝鮮で軍の行動に関わる
  • 日本軍の「王宮占領事件」の内情も知っていた
  • 国権党機関紙の「視察員」として日清戦争に従軍
  • 従軍記者らによる中国商人虐殺事件
  • 川上操六への「戦況」報告
 3 王妃殺害事件の朝
  • 安達の妻・雪子の証言
  • 夜明け前の珍道中
  • 計画を狂わせた大院君の「功績」
Z 現場からの逃走──法部顧問・星亨と、写真師・村上天真
 1 王妃を斬った自由党壮士の証言
  • 星亨の子分、寺崎泰吉
  • 寺崎の王宮侵入談
 2 星亨の借金問題をめぐる井上馨と陸奥宗光の書簡
  • 井上の陸奥あて書簡
  • 陸奥の井上あて書簡
 3 星亨の朝鮮政府法部顧問への就任
  • 李呵O捕縛事件
  • 朝鮮の裁判所における星と配下たち
  • 星の帰国とアメリカへの出国
 4 村上天真が撮影した全【王偏に奉】準(チョン ボン ジュン)の写真
  • 『めざまし新聞』特派写真師
  • 東学農民軍の指導者、全【王偏に奉】準(チョン ボン ジュン)の写真
  • 星亨と陸奥への限りなく深い疑惑
終章 狙いは「電信線」の確保だった
  • 井上馨が聞いた王妃の言葉
  • 三浦梧楼が聞いた王妃の声
  • 大本営が三浦梧楼に課した使命
  • 日清戦争での電信線の決定的な役割
  • 日清戦争以前の朝鮮における電信線
  • 終わりに
 あとがき



 
●担当編集者より

 ここでの朝鮮王妃というのは、日本では「閔妃(ミンビ)」と呼ばれ、韓国では「明成皇后」と称される、朝鮮王朝の最後の王妃のことです。1日清戦争が終わって半年後、1895年の秋、早朝の王宮を襲った日本人の暗殺団によって惨殺され、遺骸は焼き捨てられました。
 この恐るべき事件が日本で広く知られるようになったのは、今から20年前、1988年に出版されベストセラーになった角田房子さんの『閔妃暗殺』からですが、その労作の終わりの方で角田さんはこう書いています。
 ――長期の取材の結果、この事件への日本政府の関与は確認できなかった。

 この『閔妃暗殺』の結論に対し、この事件は、時の参謀本部の指揮官・川上操六と朝鮮公使・三浦梧楼が結託して企画し、それを伊藤博文首相、陸奥宗光外相が黙認了承、陸軍の一部や海軍の諜報将校、さらに民間の「壮士」を動員して決行した、つまり政府・軍部総がかりの謀略事件であったことを実証したのが、本書『朝鮮王妃殺害と日本人』です。
 本書は、これまで「閔妃の写真」として多くの本に掲載されてきた1枚の写真の考証から始まります(序章)。探索は、米国やイタリア、フランスで出版された書籍や雑誌にまで及び、その最初の掲載誌は日清戦争中に発行された日本の写真画報であることが突きとめられ、撮影された女性は王妃ではなく、宮廷の女官であると断定されるのです。
 これは一例ですが、本書をつらぬいているのは徹底した実証主義です。ソウルの公使館と東京の外務省や大本営との間で交わされた電信記録のほか、日本と韓国で発行されている記録や関係者の回想録など、広範囲にわたる史料を駆使することにより、事件の全容が解き明かされます

 著者は、悲運の王妃が生まれた1851年からちょうど100年後の1951年に日本で生を受けた在日二世の女性研究者です。
 これまで、陸軍中将の朝鮮公使・三浦梧楼を首謀者とする偶発的な事件と見られてきたこの事件が、実は日本政府と軍部により周到に準備された謀略事件だったことを実証した本書は、日韓両国の歴史研究に大きな一石を投じるとともに、この事件を近代日本と朝鮮・韓国との関係を考える上で欠かすことの出来ない重大事件として位置づけなおしたといえます。
 「韓国併合」100年を前に在日研究者によって生み出された画期的な歴史研究の成果として、多くの人に読んでほしいと願っています。


(梅田正己)


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