多くの人にとって、中国残留孤児問題」はもう遠い記憶になっているかもしれません。全国2200人の孤児たちが生活の保障と国家による謝罪を求めて国賠訴訟の裁判を起こしたのは今から6年前の2002年12月。その後、政府から新支援策が提示され、孤児たちがそれを受け入れたことで、問題はすべて解決した――そう思われているかと思います。しかし、本当にそうだろうか? 本当に問題は解決したといえるのだろうか……その疑問を抱きながら、1新聞記者と写真家が2年余の歳月をかけ、孤児たちの家を1軒1軒訪ね歩き、問題提起したのが本書です。
残留孤児の記録は、高文研ではこれまでも朝日新聞記者・大久保真紀さんの『中国残留日本人――棄民の経過と帰国後の苦難』を出しているのですが、今回本書に収めた29人の歩んで来られた道のりを読むと、改めて何という過酷な人生だったかと、胸が締めつけられる思いです。産まれて母の顔も知らず、あるいはまだ幼い少女期、少年期、1人異国の地に取り残され、中国人養父母のもとで、その多くが学校にも行かせてもらえず、労働に酷使され、周りからは「小日本鬼子」「侵略者の子」「日本に帰れ」といじめられた体験を持つ――。
『私たち、「何じん」ですか?』という書名は、本書の第T章「朗読劇」のタイトルからとったものです。孤児たちの多くは、いまでも日本語が不自由な人がほとんどです(帰国した孤児のために、日本政府が用意した日本語研修期間はわずか4カ月でしかない)。そのため、働きたくても働く場所がない。やっと見つけた職場では、「ばか、あほ、まぬけ」「中国人」「中国に帰れ」という罵声を浴びせられる。ある孤児は嘆きます。「中国では日本人、日本では中国人と言われ、自分が“何じん”かわからないのがつらい…」と。
中国に取り残されたのは、孤児のせいではありません。
私たちが決して忘れてはいけないこの国の歴史をもう一度思い起こすために、この本を手にしていただきたいと思います。