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●目次
はじめに
第I部 北坦事件との出会い
- 北坦村への旅
- 毒ガス戦犠牲者の碑
- 毒ガス戦の生き残り、李徳祥さんの証言
- 裏付け調査
- 毒ガス使用の決定的証拠
- 日本軍大隊長の手記を発見
- 手記の執筆者に直接会って話を聞く
- 戦史叢書『北支の治安戦(2)』編纂官に話を聞く
第II部 北坦事件の背景
- 近代日本の膨張主義と中国侵略戦争
- 日本軍の毒ガス研究
- 日本軍の毒ガス作戦
- 日中戦争と北坦事件
第III部 無差別虐殺の日
- 臨戦態勢──事件前日(一九四二年五月二六日)
- 武器を身近におき、靴をはいたまま寝た
- 毒ガス対策のニンニク持参で戦闘待機、弾は一一個だけ
- 砲撃・銃撃戦──当日午前(五月二七日)
- 日本軍が今、沙河を渡っている
- 日本兵は「ヤー! ヤー!」と、ものすごい気合いで突撃してきた
- 弾丸一個で、必ず一人を殺せ
- 日本軍の銃撃で、庭の木に三つ穴があいた
- 先頭の日本兵が日の丸を担いでいた
- 死んでも侵略者と戦う覚悟
- 銃砲撃の前線に、食糧をとどける
- 南坦で日の丸をはっきり見た
- 東湖村からかけつけ、区小隊・民兵一七人で守備
- 毒ガス散布──当日午後(五月二七日)
- ガス中毒でつかまった後、抗日幹部らと脱走する
- 李洛敏家の集団虐殺を、兄が目撃した
- 八路軍の捕虜に仕立てあげられたため、井戸端の虐殺を免れる
- 中国人を殺すと同時に、井戸のなかに蹴り入れた
- ロープで縛られたまま、日本兵をふり切って逃げる
- 「漢奸」の密告で強姦された婦女救国会主任
- 死体の上を這って逃げた
- 毒ガス中毒のクシャミとセキで、地下道のなかは騒然
- 地下道で毒ガスを嗅ぎ、姉、妹、弟の計四人が殺される
- 一族一八人のうち一〇人を殺される
- 毒ガスはトウガラシと硫黄を混ぜた臭い
- ニンニクと石けんで毒ガスを防いだ
- 女性たちは、強姦された
- 一〇〇人の民衆を連れて、東へ逃げた
- 北坦の銃声や叫び声を、東湖村で聞いた
- 二発撃たれたが、走って逃げのびた
- 地下道の入口は、毒ガスを放った後にフトンでふさがれた
- 神様をまつった家に避難して、助かる
- 地上にいた東城村の抗日幹部は、すべて捕まった
- 直後の惨状──二日目午後〜(五月二八日)
- 惨! 惨! 惨!
- 地下道から三〇〜四〇人の死体を引き出した
- 赤ん坊が母親の乳を吸いながら、母子ともに毒ガス中毒死していた
- 六人の子どもの死体を地下道から引き出した
- 馮香雲と王大恒の井戸では、一〇〇人くらいの死体があった
- 強姦されたらしい女性が、腹を上下に切り裂かれ、内臓が流れ出ていた
- 死者数は、事件直後の調査で八二〇人
- 李洛敏の屋敷では、数十人が殺されていた
- 水をくれ、水をくれ
- 家族五人のうち四人を殺され、一夜にして天涯孤独に
- 村は死の世界≠セった
- 妊婦がお腹を裂かれ、胎児が出ていた
- 地下道のなかで、人に踏まれて死んだ子どもも多い
- 日本軍将兵の証言
- 第一六三連隊第一中隊長(中尉)の証言
- 第一六三連隊第四中隊兵士(一等兵)の証言
- 第一一〇連隊第一一中隊小隊長(少尉)の証言
- 第一六三連隊第一大隊本部付兵士(二等兵)の証言
第IV部 事件後─抗日戦争の勝利
- 強制連行された人々
- 日中戦争と中国人強制連行
- 王俊傑さんの証言
- 郭潤清さんの証言
- 事件後の北坦村
- 青紗帳闘争の開始、一年後には形勢逆転
- 頭を腰にぶら下げて、抗日活動
- トーチカの跳ね橋を焼き払う
- 三人の漢奸を村で処刑した
- 一人二役、昼は日本軍、夜は八路軍の警備
- 「第一七団、銃一五〇挺」の拷問
- 拷問と漢奸の通報、間一髪で命びろい
- 李親顧トーチカの「大ヒゲ」
- 日本軍トーチカで同化教育
- 八路軍に入隊、毛沢東思想で難局のりきる
- 八路軍に入り、日本降伏後は国民党軍と戦った
- 婦女救国会で八路軍を支える
日本人への言葉──あとがきにかえて
●担当編集者より
日中戦争下、日本軍が中国各地で毒ガス作戦を展開したことを知っている日本人は少ないと思います。なぜなら、当時、国際法で使用を禁止されていた毒ガス兵器を用いた作戦について、日本軍はその隠蔽を徹底したからです。戦後に至っても、「公刊戦史」と言われる『戦史叢書』ではまったく触れられておらず、「毒ガス作戦の真実」は闇に閉じこめられたままです。
著者の石切山英彰氏は、15年の歳月をかけて、毒ガス作戦の中国人生存者への聞き取り調査、日本軍将兵への取材を重ねて、中国側軍民約千人の犠牲者を出した「北坦事件」の真相を明らかにしました。「北坦村で何があったのか」「本当のことを知りたい」という石切山さんの執念にはただただ頭が下がります。
アジア太平洋戦争について、「アメリカと戦った」「アメリカに負けた」という実感を持っている日本人は多いと思いますが、「中国と戦った」「中国に負けた」という実感を持っている日本人はほとんどいないのではないでしょうか。
本書は、日本軍が行った毒ガス戦について、徹底的な聞き取り調査を重ねて、「北坦村で起きたこと」の真相に迫ったルポですが、この虐殺事件を通して見えてくるのは、「三光作戦(焼き尽くし、殺し尽くし、奪い尽くす)」「毒ガス戦」「強制連行」の3点がセットになった、日本軍による典型的な抗日勢力掃討作戦であったことがわかります。そして、なぜ、圧倒的な火力に優る日本軍が負けたのか、侵略された側の中国民衆の怒り、抗日勢力のゲリラ戦の実態を知ることができます。歴史に「if」は無意味ですが、仮にアメリカと戦端を開いていなくても、結局は、日本軍は、ベトナム戦争のアメリカ軍のように、中国大陸から追い出されただろうと思います。
日中戦争に関心のある方には、日本軍の毒ガス作戦を記録した基礎文献としてぜひ読んでもらいたい本です。
真鍋かおる
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